1.「デスティネーション」について
「デスティネーション(destination)」は「目的地」を意味する名詞です。
ですが、このページに登場する「デスティネーション」は全て形容詞です(*)。2. 形容詞「デスティネーション」の意味
形容詞としての "destination" の意味を単独で載せる辞書は見当たりません。 "destination hotel" や "destination store" という具合に名詞と組み合わせた形でしか載っていません。
したがって、形容詞としての "destination" の意味は、このように推察するしかありません。3.「デスティネーション~」の意味
上述の形容詞としての「デスティネーション」の意味を踏まえて、次の6つの言葉の意味を見てゆきましょう。
- デスティネーション・ウェディング(destination wedding)
- デスティネーション・ホテル(destination hotel)
- デスティネーション・レストラン(destination restaurant)
- デスティネーション・リゾート(destination resort)
- デスティネーション・ストア(destination store)
- デスティネーション・サイト(destination site)
3.1. 「デスティネーション・ウェディング」
「デスティネーション・ウェディング」は、結婚式の参加者一同の海外旅行を兼ねた結婚式です。 海外旅行の目的地たりえる場所に結婚式の参加者一同が集まり、そこで結婚式を行います。結婚式抜きでも当該の場所への移動&滞在が「海外旅行」という娯楽として成立する結婚式が「デスティネーション・ウェディング」です。
どの辞書を見ても「(目的地は)外国」とあるので、「デスティネーション・ウェディング」の行き先は常に海外でしょう。3.2. 「デスティネーション・ホテル」
「デスティネーション・ホテル」とは、それ自体が行楽の目的地となるホテルです。 「デスティネーション・ホテル」は「リゾート・ホテル」と同じ意味です。3.3.「デスティネーション・レストラン」
Wikipedia によると「デスティネーション・レストラン」とは、「そこで食事したいがために、わざわざ遠くまで行くような、そんな飲食店」です。3.4.「デスティネーション・リゾート」
「デスティネーション・リゾート」という言い方はおかしい
「デスティネーション・ホテル/ウェディング/レストラン」では、「デスティネーション」を「それ自体に目的地となるだけの価値がある~」という意味に理解できました。
しかし、「デスティネーション・リゾート」は違います。 リゾート自体に目的地となるだけの価値がある(*) のだから、「デスティネーション・リゾート」という言い方だと「目的地となる価値がある」の意味が重複します。
おかしな言葉が生まれた理由
"Resort Definition & Classifications.." という論文(?)によると:
- 本来のリゾートは「目的地となるだけの価値がある」ものを指すが、最近では(?)リゾートは4種類に分類され、"destination resort" を除く3種類は「目的地となるだけの価値」を十分に備えていない(*)。
- そして、そういう「リゾート未満のリゾート」と区別して「本来のリゾート(目的地となるだけの価値を有するリゾート)」を "destination resort" と呼ぶ。
(*) 例えばスキー場やビーチの近くにあるホテルや旅館は、行楽の主な目的はスキーや海水浴であり、そのホテルや旅館が旅行の目的ではありません。 そのホテルや旅館にも娯楽(卓球台とか温泉とか)はあるけれど、そのためだけに出向きはしません(例えば旅館で卓球するためだけに旅行に行きはしません)。
そのように「目的地となるだけの価値」を十分には備えないホテルや旅館が最近では「リゾート」と呼ばれるわけです。"destination resort" の "destination" の意味
こういう訳なので、"destination resort" の "destination" も「それ自体に目的地となるだけの価値がある~」の意味です。
3.5.「デスティネーション・ストア」
「ストア(store)」は「お店」という意味です。
InfoBloom というサイトは、"destination store" を次のように説明しています:説明文中の「何らかの理由」とは次のようなものでしょうか:
- 百貨店やショッピング・センターのように色々な店があってウィンドウ・ショッピングだけでも楽しい。
- フードコートが併設されてる。
- 遊具やゲームコーナーがある。
- 植物の植え込みが多くベンチが設置されているなどアメニティーが充実している。
ともあれ、「デスティネーション・ストア」の「デスティネーション」も「それ自体に目的地となるだけの価値がある~」の意味でしょう。
Oxford Learner's
Oxford Learner's という辞書では「デスティネーション・ストア」を「ホテル」や「レストラン」に混じえて次のように説明しています。a hotel, store, etc. that people will make a special trip to visit
ホテルや店などであって、人々がそこを訪れるため殊更(ことさら)に出かけるところ
Oxford の情報の記述からも、「デスティネーション・ストア」の「デスティネーション」が「デスティネーション・ホテル/レストラン」と同じ意味であるのが窺えます。
3.6.「デスティネーション・サイト」
「デスティネーション・サイト」の「サイト」とは、Webサイトのことです。
Longman では、"destination site" を次のように説明しています。4.「デスティネーション」の意味の変質?
4.1.「定番の~」
先述の「デスティネーション・ストア」について調べていて、富士通のサイトで次の説明を見かけました。この説明によるなら「デスティネーション」は「定番の~」というような意味です。 どう転んでも「それ自体に目的地となるだけの価値がある~」ではありません。
4.2.「デスティネーション・サイト」の訳語は「定番サイト」?
Cambridge という辞書に "destination site" の項があり、次のように定義しています:ほとんど何の説明にもなっていないボンヤリした定義ですが、この "destination site" の "destination" が 「それ自体に目的地となるだけの価値がある~」の意味でないのは明白です。
この "destination" は「定番の~」と訳せそうです。 何も言っていないに等しいボヤッとした定義なので、「定番の~」のと訳してしっくり来はしませんが、逆に言えば明確な矛盾もありません。