「ジャガーノート」と「ドレッドノート」の意味は? 関係は?

質問:「ジャガーノート」と「ドレッドノート」って関係ありますか? それぞれの意味を教えてください!

回答:「ジャガーノート」は「止めることのできない圧倒的で破壊的な力」という意味です。 立ちふさがるもの全てをなぎ倒します。

「ドレッドノート」は「巨砲を搭載する戦艦」という意味ですが、他にも意味があります。

詳しくは以下をご覧ください。

1.「ドレッドノート」の詳しい意味

「ドレッドノート」を英語に戻すと "dreadnought"。 "dreadnought" の詳しい意味は次の通りです:

  1. 巨砲を搭載する戦艦(特に第一次世界大戦で用いられた戦艦を指す)
  2. 同種のもののうち最も大きかったり強かったりするもの
  3. アコースティック・ギターのうち、他の一般的なギターよりもボディーが大きく音も大きいもの。
  4. 厚手の布で作られた(防寒などに関して)頼もしい衣服
  5. 怖いもの知らずな人

2.「ジャガーノート」の詳しい意味

「ジャガーノート」を英語に戻すと "juggernaut"。 "juggernaut" の詳しい意味は次の通りです:

  1. 止めることのできない圧倒的で破壊的な力。
  2. そのような力を体現する存在。 例えば、市街地を暴れまわるブルドーザーや戦車(1)
  3. 巨大なトラック(2)
  4. ヒンドゥー教の神ヴィシュヌの化身の1つであるクリシュナの偶像

(1) 戦場で他にもたくさん戦車があるうちの一輌(いちりょう)を指して「ジャガーノート」と言いはしません。 戦場には当該の戦車と同等以上に強力な存在(他の戦車や攻撃ヘリ、爆撃機)が他にも多数あるからです。

ですが、一台の戦車が市街地で暴れるなら、その戦車は誰にも止められない突出して圧倒的な存在。 そういう状況では、その戦車は「ジャガーノート」です。

(2) この意味の "juggernaut" は、主に英国で用いられます。 "juggernaut" が意味するトラックは、大量の物品を長距離にわたって運ぶ大型トラック。 「図体のでかいトラック」と軽蔑的な意味合いで用いられることも。

3.「ドレッドノート」と「ジャガーノート」の関係

結論を言えば「ドレッドノート」と「ジャガーノート」は無関係です。 どちらも強大なイメージで単語の響きも似ていますが、両者は無関係です。

この点を示すため、"dreadnought" と "juggernaut" の語源を以下に記載します。

3.1. "dreadnought" の語源

"dreadnought" は第一次世界大戦で英国海軍が用いた戦艦「HMS Dreadnought」に由来する言葉です。 "dreadnought" は、この戦艦が命名される際に作られた造語でしょう。
戦艦「HMS Dreadnought」は 1906年に進水しました。

"Dreadnought"

"Dreadnought" は "dread" と "nought" から成ります:

  • dread ・・・「恐れる」を意味する英語の動詞。(詳しくは「ドレッドの意味」を参照)
  • nought ・・・ 「ゼロ、無い物」を意味する名詞/代名詞。 "nothing" と同じ意味。
"dread" が動詞で、"nought" がその目的語という位置づけです。
例えば、"I dread nought" で「私は何も恐れない」という意味。

英国海軍は「恐れるものが何もないほど強い戦艦」という意味を込めて "dreadnought" と名付けたのでしょう。

"HMS"

「HMS Dreadnought」の "HMS" の部分は、「陛下の船」を意味する "Her/His Majesty's Ship" の頭字語です。 「陛下」が女性なら "Her"、男性なら "His" です。

3.2. "juggernaut" の語源

"juggernaut" の語源は、「世界の王」を意味するサンスクリット語「जगन्नाथ(jagannātha)」です。 「世界の王」とはヒンドゥー教の神ヴィシュヌの化身であるクリシュナのことです(ヴィシュヌ自身を指すと説明する辞書も)。

"juggernaut" 誕生の経緯

巨大な戦車

インドのオディシャ州(1) やベンガル地方では、クリシュナの偶像を巨大な戦車(2)(というより神輿)に載せて町中を練り歩く祭りが年に1度行わます。

祭りでは数百人とも数千人とも言われる大人数がロープで神輿を引きますが、そのロープに触れると御利益(ごりやく)があると言われており、ロープに触れようとする人が後を絶ちません。

(1) 2011年までは「オリッサ州」と呼ばれた。

(2) 戦車と言っても馬で引くような古代の戦車(チャリオット)。
人身事故も
大勢の人に引かれ勢いの付いた大きな神輿は、人が前に倒れ込んだからといって急には止まれません。 なので、大勢がひしめく中でロープに触れようとした人が後ろの人に押されて神輿の前に倒れ込み神輿に轢かれる事故も発生しました。(*)
(*) かつては熱心な信奉者が神輿の前に身を投げ出し命を捧げたとも言われますが、真偽は定かではありません。

クリシュナの偶像が乗る神輿

こちらのサイト(外部サイト)には写真も。

英国に伝わる

ヨーロッパ人がインドの植民地化を推し進めていた17世紀に、クリシュナの神輿や事故の死者数のことが大げさに英国に伝えられ、先述の「世界の王(クリシュナ)」を意味するサンスクリット語「जगन्नाथ(jagannātha)」をベースに "juggernaut" という英語が生まれました。

"juggernaut" の "-naut" という語尾は、英語の接尾辞 "-naut" (*) の影響だとされます。
(*) "-naut" はギリシャ語由来の接尾辞で、「航海者、旅人」を意味します。

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